奈良⇔山形

絵描き、三瀬夏之介の日々諸々。
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くるり。
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    怒涛の9月も半ばを過ぎ、飛ばしすぎたのか少し体調を崩しました。

    シトシトと降りしきる雨の中で珍しくぼーっとしております。

     

    洗心庵での個展をどのように構成しようかということは中々難しく、プランは紆余曲折する中、あのような形に落ち着きました。

    まずもって純粋な自身の個展ではなく「山形ビエンナーレ」の1会場であるということが最後まで多くの決断を鈍らせる中、最初から押さえておきたかったポイントは3つ。

     

    ・地理的な条件を探ろう

    ・歴史的な条件を探ろう

    ・それを血肉化した上で作家としてのイメージの飛躍を刻み込もう

     

    山形には「きてけろくん」というおもてなし課長のゆるキャラがいますが、県の形自体が人の横顔をしているという特徴があります。同じような盆地奈良県出身の僕から見ると、県のフォルム自体への愛着というか、イメージの定着が面白いなといつも思ってました。

    ここ最近の「絵画としての旗」の興味から、山形県の郷土愛と旗印の重なりをそのまま具現化してみたらどうなるだろうかという作品がエントランスで皆さんをお迎えします。

    山形県を逆さに見たら、裏から見たら、触ってみたら、新たな感覚が生まれないものか。これは僕の絵画論でもあります。

     

    さらに洗心庵の立地条件を掘り起こしていくと、近くを流れる馬見ヶ崎川との関係が見えてきます。

    その昔、暴れ川として知られていた馬見ヶ崎川は江戸時代初期に山形藩主の鳥居忠政が流路を変更する大工事を行うまでは、洗心庵のすぐ側を流れていました。門を出て右手に進むと現れる大きな交差点は今でも独特の形をしていて、かつての河川の形を思い起こされます。またメイン会場である文翔館のある場所は当時の川上にあたり、河川敷は処刑場だったとも言います。文翔館から洗心庵までの川の流路の痕跡を探しながらのそぞろ歩きもオススメです。

    ちなみに流路変更に伴い設けられた5箇所の取水口である山形五堰は現在も山形の中心街を網目のように流れ、街を潤し続けています。

    市プロジェクト「芸術界隈」が開催されている御殿堰もその一つです。

    こちらをめぐるお散歩もオススメ!

    https://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/shiseijoho/sub14/noson/848c11203144653.html

     

    そういったわけで、会場では舟のイメージが皆さんを誘うようにくるりくるりと回り続けています。

     

     

    続いて歴史的な掘り下げをしている時に衝撃的な新聞記事に出会いました。

    日付は僕の生まれる一年前の昭和47年7月14日の朝日新聞です。国の計画により鶴岡市の七窪地域に原発を作る計画があり立地調査も行われたとのこと。地元の反対運動や宮城県女川町の誘致などにより計画は頓挫しましたが、山形県には原発がないんだという思いは、ほんのすこしの歴史的な決断如何ではどうなっていたか分からないんだと気持ちが大きく揺れました。

    また実際その場所に足を運んで見た衝撃的な光景が今回の個展の強い動機になっています。

     

    「山形の絵 -小盆地宇宙-」と題された旗状の絵は二つの同心円状の円弧によって切断されています。

    一つは鶴岡市七窪地域、もう一つはここ洗心庵のある緑町で、そこからの波紋がある場所でぶつかり合っています。また山形県の鼻先を横切る直線による切断は、僕が使用している和紙のサイズによる物理的な限界により引かれた線。

     

    この美しい自然や文化のグラデーションを持った日本に無機質で暴力的な線が引かれることについて、ここ数年僕たちは現実のこととして目の当たりにしてきました。この場所の存続は自明なものではないというリアリティーはここ東北にいると切実に感じます。

     

     

    会場最奧で立ち上がるのがこの屏風上の作品で、こちらは「小盆地宇宙」と名付け、盆地一般を描いた絵です。

    上記二つの条件を知った上で忘れるという、難作業の上で描かきました。

    ただ思いのまま描くのではない、がしかし現実の諸条件に縛られるのでもない、その間を綱渡りに歩くような制作は本当に難航しましたが、夏のたっぷりとした時間が修行僧のような感覚を僕に与え、多くの偶然を取り込み、覚醒と陶酔の間に完成したものです。

     

    例えば1日12時間以上描くとか、考えられる描画素材という素材を手の届く範囲に用意するとか、寝転ぶとか、引っ掻くとか、絵の上で生活してみるとか、穴をあけてみるとか、たたんでみるとか、絵に絵をかけてみるとか。

    今回、僕が山形県というフォルムを弄り倒したように、この絵とも呼べない何ものかも弄り倒してやりました。

     

    しかし忙しすぎて会場にいれないのが本当に残念です。来週の24日にはトークイベントがあります。この日くらいはこの贅沢な場所でのんびり過ごしたいなぁ。とにかく現在の僕からの「地域アート」への解答です。

     

    それでは雨の日の独り言でした。

     

    ・トークイベント 9月24日(土)13:00-14:30 「洗心庵を読み解く」@洗心庵  三瀬夏之介×井上貴詞(建築家)

    出品作家の日本画家、三瀬夏之介と、山形市緑町在住の建築家、井上貴詞が会場である洗心庵の歴史をひも解きながら作品解説を行います。

     

     

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