奈良⇔山形

絵描き、三瀬夏之介の日々諸々。
レビュー。
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    長い長い2週間がようやく終わりました。
    芸工大名物、大学院研究中間発表レビューは絵画、彫刻、工芸系の研究領域はもちろん、デザイン、建築環境、保存修復、美術教育、ビジネスなどの研究領域の発表、質疑応答、院生同士の交流が行われます。
    僕は専攻長として司会を担当しているんだけど、領域横断の繋がりを求めて期間中は勉強の毎日でした。

    今回は「個」と「公」の関係を新しいコミュニティー形成に求める研究、「人間」と「自然」の新たな関係を土着文化や信仰に再発見する研究、「美術」と「生活」の関係をしつらいの部分から模索していく研究などが印象に残りました。
    その多くが現代性という横軸に、歴史性という縦軸を通し、自身の座標軸を客観的に認識した、今に訴えかける骨太の研究であったことがとてもうれしく、そして僕自身強い影響を受けました。

    今回初めて博士学位審査にも参加させてもらったのですが、 美大の博士号って審査基準が難しい。
    入学してすぐの院生は、まずこの時代に生きているだけで現代性を担保されていると思いがちで、思いの客観性が問われること、先行事例と自作の関係、所属領域の特殊言語が通用しないことなどにショックを受ける。絵の中で考えろだの、手で考えろなどという教員もまだいる。
    美大の大学院まで来たんだから、ものを作り出したいという衝動を持っていることは当たり前のこととして、その作品の時代性、新規性をしっかりと語れるようになり、その考察がイメージを展開させ、イメージが考察を促すような持続的な研究者になってほしい。



    そしてレビュー会期中には有志メンバーがオープンスタジオを開催。
    完結した作品と15分の発表だけではなく、ドローイング、エスキース、スケッチ、画材、参考文献などのイメージソースと公開制作を見せたいという訴えがあった。
    クリエイティブの前に何がなされるべきなのか、作品と言葉と交流を通して共有されつつあるのを感じます。
    卒業後のリアルを語る多くのゲストもお招きして盛り上がりました。





    そう、地域とアートを考える院生主催のセッションもありました。
    プログラムを組むディレクター、プレイヤーとしてのアーティストだけではなく、それを受け入れる住民側という両面から組み立てられていたことがとてもよかったと思います。
    この時代、作り手としてどうキャリアをつくっていけばいいのか、そしてそこに地域型アートプロジェクトをどのように関係付けるべきか、そしてその可能性と危険性。
    その多くが未だ総括のないままに乱立中の地域型アートプロジェクト、その直中に飛び込もうが、距離をとろうが、語り続け共有しておかなくてはいけない問題だと思います。



    この濃密な二週間で常に頭が覚醒を止めない。
    さぁ僕もそろそろみんなと同じ場所から出力するよ!

    | natsunosuke | 芸工大 | 22:10 | - | - | - | - |
    惜情。
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      内藤正敏先生の最終講義が終わりました。
      とても1時間で終わるとは思えず、まきが入ろうが、電気がつこうが、欲望のままにしゃべり続けるパンクな姿をしっかりと焼き付けました。

      出羽三山をモチーフにして、壮大な地形を使ってのストーリー、それを解説するのではなく、解読する。
      「豊浦村海底詳細図」を使って、見えない海底を見ることを民俗学になぞらえる最後の語りは感動しました。

      「宗教より、信仰より先に自然がある」

      内藤先生が美術を語る時には見えるものではない、その背後への感覚、思考への志向をいつも感じていました。
      まだまだ教わることばかりですが、いつか内藤先生にうんと言ってもらえる、可能性の様態としか言えないような絵画を完成させたいと思います。

      まだまだ休むことなく進み続けるでしょうが、長い間お疲れさまでした。



      そんな余韻に浸りながら秋田を目指しました。
      寒波が来ることは聞いてはいましたが、ここまでとは。。

      尾花沢辺りから雲行きが怪しくなり、新庄あたりではついに吹き付ける雪と乾いた積雪が舞い上がり、ほんとのホワイトアウト!
      ハザードをたきながら、道路上で前にも後ろにも進めなくなる。なんとも恐ろしい体験をしました。
      秋田では会いたい友人たちに観たい展示があったのですが、泣く泣く断念。。
      長い長い時間をかけて山形に戻りました。。

      明日は松本哲男先生を偲ぶ会のため宇都宮まで行ってきます。
      山形がどんどん寂しくなってきますね。

      | natsunosuke | 芸工大 | 19:57 | - | - | - | - |
      芸術文化原論。
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        ほんと久々のブログです。日々の思いを総括することもなく突っ走っていていかんなぁ。

        4月から大学院の専攻長の仕事を始めて、いろいろと初めてのことだらけなんだけど、一番大変なのは「芸術文化原論」という座学の必修授業の組み立てでした。そして現在も試行錯誤中。




        講義の軸は「歴史」「日本」「実践」の三つ。

        けっしてリニアなものではなく、情勢や地域によって組み替えられる可変的な美術史を押さえることによって、自身の立ち位置を知る。
        「歴史」は現在を照らし出す。

        また辺境の地「日本」の美術史、輸入概念としての美術とその現在の有効性を問うことで、日本人である作家のデフォルトを知る。その状況を逆手にとってもいいし、知っていてあえて使わないのと、知らずに振る舞うことの意味はまったく違う。
        さらに「日本」には僕たちが住む「東北」の地も含まれる。ここに住んでいること、ここで制作することの意味。中心ではないこと、中央集権的な政治、文化に覆い尽くされた古層が見え隠れすること、そして震災以降のこと。

        「実践」ではまずリアスアーク美術館の山内宏泰さんに来ていただいた。
        できること≠やるべきこと、やりたいこと≠求められていることという当たり前のことが、アーティストを気取っている人種には理解できない。
        もし社会でアーティストと呼ばれる人間が、独りよがりでよく、社会性を求められなければそれでいい。
        社会的なイメージが、自由人であり変人であったアーティストが美術の力を社会に還元してこなかったツケが今回ってきた。現場で感じた「すべきこと」さえできない。

        絵画は人間にとって最良の情報媒体、伝達手段であり、形に成りづらいイメージの形象能力に優れたのが美術家だというところに立ち返れば、記録から記憶へと抽象化、捨象化する段階を経ることによって、そのイメージは保存される。社会へ還元しつつも個性的であることが一流である、という彼の言葉は響いた。


        つづいて作家、鴻池朋子さんに来ていただいた。
        彼女の緊張感あるブレとウソのない講評に僕自身の背筋が伸びた。

        自身の思いを定着させることに夢中で、それを盛る器を全面的に信じている学生たちに、これまでにしたことのないこと、見たことのないことこそがワクワクするという彼女の言葉はどう響いたか。
        また直感や強い欲望からスタートする制作は、コンセプト重視で、説明を求めすぎる状況に対しての批判性を宿している。

        熱いのか、冷たいのか、直感的なのか、意図的なのか、捉えずらい。静けさの中の嵐のような、その振幅がとても魅力的な人でした。


        そして昨日はミヅマアートギャラリーのディレクター、三潴末雄さんに来ていただいた。
        ただの欲望のはけ口ではダメだし、時代を説明するだけのイラストレーションでもダメ。言葉と表現とそこにどうしようもなく纏う「アート」としか呼びようのない経験を彼は強く求めている。
        それをしっかりと各学生の視点に合わせながら話していただく姿には、学生という枠組みは関係ない、作り手への愛があった。

        また講義では「好きだから」ではすまない、アートシーンの仕組みから、非欧米アートの可能性までを語っていただいた。



        世界はほんと広く、目まぐるしく変化していて、そのどこを切り取ってこの講義で伝えるべきかは大いに迷うし、僕自身がその坩堝のまっただ中にいる。
        ただ美大の外には多くの価値観があることをネットの情報ではなく、肌を持って感じてほしいし、そこで感じ、つかみ取った自身の研究を突き詰めることができる美大という場所の尊さも再認識してほしい。
        各人の軸足を各人の決断の中でつかみ取っていってほしい。

        しかしアートって考えれば考えるほど離れていくなぁ。難しい。。


        | natsunosuke | 芸工大 | 20:20 | - | - | - | - |
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